現物グリッドの設定を最適化するための知識:相場別の考え方と実践例

現物グリッドは「自動で売買する仕組み」の一つです。

あまり馴染みがない言葉で、実際に使おうとすると「どの設定が正解なのか分からない」という人もいると思います。

値幅、グリッド数、等間隔と等比の違いなど、設定項目が多くて、仕組みは理解していても最適化で手が止まってしまうこともあります。

この記事では、現物グリッドで重要な設定項目の意味を整理しながら、最適設定の考え方を分かりやすく解説します。

この記事で分かること
  • 現物グリッドの概要と設定項目
  • 各相場における設定変更の考え方
  • 理想の設定をツールで算出
  • 各相場での具体的な設定例
目次

【初心者用】現物グリッドをざっくり解説

初めての人のために現物グリッドをざっくり解説します。

現物グリッドは、特定の価格範囲(上限価格~下限価格)の中に、等間隔でたくさんの注文(グリッド)を配置し、価格がグリッドに触れるたび「安く買って、高く売る」を繰り返す、自動売買戦略です。

  • 下がったら買う: 価格が下がってグリッドに触れるたびに「買い」を実行。
  • 上がったら売る: 価格が上がってグリッドに触れるたびに「売り」を実行。
現物グリッドの仕組み:安くなったら買い、高くなったら売る自動売買の仕組み

開始価格よりも上のグリッドに対しては、「売り」を出すのですが、そのために、開始時にあらかじめ自動で「買い」が行われています。

開始から上昇した場合は「買い」ではなく、対象のグリッドに到達すると「開始時に購入した分の売り」が実行されます。

現物グリッドで上昇が続いた場合の仕組み

開始直後に「未決済一覧」を見ると、まだ下がってない(購入を実施していないはず)なのに、「売り予約がでてきます。これは、事前購入分を売却予約しているからです。

メリット・デメリット

メリット
  • 感情に左右されない: 「もっと下がるかも…」や「もっと上がるかも…」という欲を無視して、システムが淡々と利益を確定してくれる
  • レンジ相場に強い: 価格が停滞しているトレンドがない相場で利益が出やすい
  • 低リスク: レバレッジをかけない「現物」で取引ができ、一気に資金がゼロ(ロスカット)になるリスクが低い
デメリット
  • 強いトレンドに弱い:
    • 爆上げ時: 「買う機会がない」、「全て売却している」状態のため、持ち続けていた方が儲かったという「機会損失」が発生する
    • 爆下げ時: 「買い」だけで売れないため、含み損がふくらむ
  • 資金効率: 買い注文のために一定の資金が拘束される
  • 利益率:ある程度資金を投入しないと一回の売買での利益率が低くなる

どんな時に使うのがベストか?

現物グリッドが最適な相場

  • 横ばい(レンジ)でボラティリティが高い相場
  • 右肩上がりでボラティリティが高い相場

避けたほうがよい相場

  • 明らかに暴落している最中(買うだけで売れない)

現物グリッドの「主要な項目」

現物グリッドの主な項目

どのプラットフォームでも、おおむね同じような設定項目があります。

重要なのは「上限価格・下限価格」と「グリッド数」、次に「グリッド幅」と「投資額」です。

上限価格・下限価格

どの価格帯の中で売買を繰り返すかを決めます。

特に「下限価格」の設定が重要です。

もし、設定した下限価格を下に突き抜けた場合、その暗号資産を「価格が下がったまま保有する(もしくは損切)」ことになります。

グリッド数

グリッド数は、レンジ内にどれだけ網を張るかという設定です。

グリッド数を増やすと売買回数は増えますが、1回あたりの利益幅は小さくなります。

一方、グリッドを減らすと回転数は落ちますが、一回の利益が大きくなります。

ただし、グリッド数は固定で決めるものではなくATRから決めます(後述)。

グリッド幅(等間隔と等比)

グリッドの幅の指定を「等間隔」と「等比」から選択できます。

等間隔と等比は次のような違いがあります。

現物グリッドの等間隔と等比の違い

「等間隔」は、価格差を均等に区切るので、横ばいに近い相場で使いやすいです。

一方で、「等比」は価格帯が変わっても比率は同じなので、値幅が広い相場や長めの運用すると効率がよくなります。

項目等間隔等比
特徴価格差が一定価格比率が一定
計算式(例)100 + 10 = 110
(次は 110 + 10 = 120)
100 × 1.1 = 110
(次は 110 × 1.1 = 121)
売買タイミング同じ値幅で売買価格が上昇すると遅くなる
利益価格が上昇すると少なくなる同じ利益率
メリット値動きが激しくない時に効率が良い価格が大きく動いても利益が安定する

トレーリング

トレーリングは、上限価格を抜けたときに、価格範囲を一緒に上にずらしてくれる機能のことです。

トレーリングを利用しない場合は、価格範囲の上に行ってしまうと何もできなくなってしまいますが、トレーリングをONにすると、上昇トレンドに乗って現物グリッドの実行を継続できます。

ただし、下限価格に対しては、ずらしてくれません。

投資額

投資額は、そのグリッドにどれだけ資金を配分するかです。

設定が良くても「投資額」が小さいと利益の積み上がりは小さくなり、逆に大きすぎるとリスクが増えます。

現物グリッドを使う時にやること(4ステップ)

現物グリッドは、以下の4ステップで設定します。

  • 相場判定(レンジ or トレンド)
  • レンジの範囲を特定する
  • ATRを基準にグリッド設計を行う(利益率・グリッド数)
  • トレーリング設定を決める

以下から、それぞれ詳しく解説します。

1. 相場判定(レンジ or トレンド)

相場によって設定が変わるため、まずはレンジ相場かトレンドが出ているかを判断します。

状態判断
移動平均線が水平に近い状態レンジ
移動平均線が右肩上がり上昇トレンド
移動平均線が右肩下がり下落トレンド

※価格が上下に大きく動している銘柄の方が適しています。

2. レンジの範囲を特定する

設定する「上限価格」と「下限価格」を決めるために、過去のチャートから意識されている価格帯を探します。

値幅設定内容
上限に設定する価格レジスタンスライン(抵抗線)を目安にしつつ、ボラティリティが大きい場合は少し余裕を持たせる
下落に設定する価格サポートライン(支持線)を目安にしつつ、ボラティリティが大きい場合は少し余裕を持たせる
  • レジスタンスライン(抵抗線):その価格になると頭打ちになって戻ってくる高値(レジスタンス)
  • サポートライン(支持線):その価格になると何度も跳ね返されて戻ってくる安値(サポート)

3. ATRを基準にグリッド設計を行う(利益率・グリッド数)

ここが一番重要なポイントです。

現物グリッドでは「利益率・グリッド数」で考えてしまいがちですが、実際はこの2つは別々に決めるものではありません。

グリッドの本質は「価格の動き(ボラティリティ)に合わせること」で、この「動き」を数値化したものがATR(Average True Range)です。

ATRから「1回の値動きの大きさ」を把握し、その一部を「1グリッドの利益幅」として使い、レンジ全体をその幅で割って「利益率・グリッド数」を決めます。

実際の式

  • ATR% = ATR ÷ 現在価格 × 100
  • 利益率 = ATR% × 係数(10〜20%が目安)
  • グリッド数 = レンジ幅 ÷ 利益率

ATRの動きと利益幅・グリッド数には以下の関係があります。

ATRの動き利益幅グリッド数
大きい(よく動く)広く取る少なくなる
小さい(動きが小さい)狭くする多くなる

利益率を固定(例:1%)したり、グリッド数を固定(例:10本)したりすると、相場に合わず「約定しない」「利益が出ない」原因になるので注意が必要です。

ATRを基準にグリッド設計を行う(利益率・グリッド数):現物グリッドでは「利益率を決める・ グリッド数を決める」は同時に決まります。

4. トレーリング設定を決める

トレーリングは、価格が上限を超えたときにレンジを上に追従させる機能です。

上昇トレンド → ON

上昇トレンドでは、価格がそのまま伸びる可能性があります。

このときにトレーリングをONにすると、上昇に追従して利益を伸ばすことができます。

「上抜けしそうな相場」で使うのが基本

レンジ相場 → OFF

一方、レンジ相場では価格は行ったり来たりを繰り返します。

この状態でトレーリングをONにすると、無駄にグリッドが動いて効率が落ちます。

「横ばいの相場」ではOFFが基本

レンジ相場・上昇相場・下落相場での設定

レンジ相場に強い設定

現物グリッドが最も力を発揮しやすいのは「レンジ相場」です。

価格が一定の範囲で往復する相場では、グリッドの売買が成立しやすくなります。

この場合は、レンジ(価格が上下する範囲)に合わせて上限価格と下限価格を設定し、グリッド数をやや多めにして細かく利益を拾う考え方が合いやすいです。

項目設定内容
値幅設定(上限・下限)目安:直近高値・安値を目安にしつつ、ボラティリティが大きい場合は少し余裕を持たせる
グリッド数細かく~中間
グリッド幅等間隔(どこでも均等に利益を得るため)
目的小さな値動きを何度も拾う

上昇トレンドに強い設定

上昇相場では、上方向への伸びを逃しにくい設定が大切です。

上昇相場でレンジを狭くしすぎると、価格がすぐ上限を抜けてしまい、その後は十分に売買が回らなくなることがあります。

そのため、上限を広めに取り、グリッド数は中程度で伸びに対応しやすくします。

また、上のグリッドでも利益を得られるように等比にします。

項目設定内容
値幅設定(上限・下限)目安:直近高値・安値を目安にしつつ、ボラティリティが大きい場合は少し余裕を持たせる
ATRに対する利益率の係数中間~広め
グリッド幅等比(※)
目的上昇の流れを壊さず、途中の押し戻りも拾う

(※)価格が上昇して「1BTC=1,000万円」など高値圏になった時、等間隔(1万円刻みなど)だと利益率が極端に下がってしまいます。等比なら価格が上がっても「常に資産の◯%」の利益を確保できるため、上昇トレンドの恩恵を最後まで受けられます。

また、等比は価格が低いほどグリッド幅が狭くなる性質があるため、「価格が下がった時ほど細かく買い(ナンピン)、反発時の利益を最大化する」という押し目買い戦略に適しています。

下落トレンドに強い設定

下落相場では、基本的に運用しない方が無難です。

理由は、価格が下限を大きく割ると含み損を抱えることになるからです。

それでも設定する場合は、「防御型グリッド」を利用します。

下限を慎重に考え、投資額も抑えめにする方が安全です。

(※)下限価格の考え方には2パターンあり、戦略に応じて使い分ける

  • 深めにとって反発まで耐える
    • 下限を抜けると損失が大きくなるが、反発時は大きくとれる可能性がある
  • 浅めにとって損切して逃げる
    • 下限を抜けても損失は少ないが、反発時は機会損失になる
項目設定内容
上限価格戻り高値を基準に設定
下限価格深め/浅め(戦略に応じて使い分け)
ATRに対する利益率の係数細かく(細かく刻んで利益を確保する)
グリッド幅等比(ナンピンで拾う)
目的下落耐性を高める

【ツール】ATRから理想の設定を算出

時間がない人向けに、まずはATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)」から、理想の設定を算出するツールを紹介します。

各項目を入力して「計算」をクリックしてください。

設定項目
  • 現在価格:現在のビットコイン価格
  • ATR:ボラティリティを示すテクニカル指標(TradingViewのインジケーターで確認可)
  • 上限:現物グリッド値幅の上限価格
  • 下限:現物グリッド値幅の下限価格
  • ATRに対する利益率の係数:1回の売買でどのくらい細かく利益を取るかを決める割合
    • 10%:細かく(回転重視)
    • 15%:中間
    • 20%:広め(やや利益率重視)

※ATR(1日の平均的な動き)の10〜20%を1回の利益幅に設定することで、1日のうちに数回の利確が発生しやすくなります。

現物グリッド数 計算ツール

計算式:
ATR% = ATR ÷ 現在価格 × 100
推奨利益率 = ATR% × 係数
レンジ幅% = (上限 – 下限) ÷ 現在価格 × 100
理想グリッド数 = レンジ幅% ÷ 推奨利益率

ここに結果が表示されます。

このツールは何をしているのか

相場の動きに合わせて、ちょうどいいグリッド数を自動で決めています。

グリッド数は現物グリッドで「利益率」や「回転率(売買頻度)」に影響する重要な項目ですが、

  • なんとなく10本にする
  • 利益率を1%で固定する

といった適当な設定をすると、「取引が発生しない」、「利益が小さい」といった事態が起こります。

そこでこのツールでは、「今の相場がどれくらい動いてるか(ATR)」を基準にグリッド数を出すことができます。

ATRから、現物グリッドの最適なグリッド数を算出する

現物グリッドの具体的な設定例

レンジ相場での設定例

相場状況:日足で直近は急落後のレンジ移行(約105k〜115k)、トレンドは弱気寄り〜中立の状態。

設定項目設定設定理由
最小投資額30,000〜50,000円下抜けリスクあり
ATR3772TradingViewから取得
値幅上限116,000直近の戻り高値
値幅下限104,000直近の安値
グリッド幅等間隔どこでも均等に利益回収
トレーリングオフレンジ相場のため(※)

(※)レンジ相場でトレーリングをオンにしてしまうと、上昇時に下のグリッドが消えてしまう。

ツールで算出した理想の設定は以下のとおり。

ツールで算出した理想の設定

  • ATR%: 3.47%
  • 設定レンジ幅: 12,000
  • 設定レンジ幅%: 11.04%
  • 推奨利益率: 0.52%
  • 理想グリッド数: 21.21本(→21本前後で設定)

上昇トレンドでの設定例

上昇相場

相場状況:明確な上昇トレンドができており、直近は押し目から再上昇後、高値張り付きの状態。

設定項目設定設定理由
最小投資額50,000〜80,000円※トレンドにのる
ATR2862TradingViewから取得
値幅上限110,000直近の高値を超えたところ
値幅下限99,000直近の安値近辺
グリッド幅等比・価格が上がっても利益効率が落ちない
トレーリングオン上抜けたらグリッドを追従させる

ツールで算出した理想の設定は以下のとおり。

ツールで算出した理想の設定

  • ATR%: 2.68%
  • 設定レンジ幅: 11,000
  • 設定レンジ幅%: 10.29%
  • 推奨利益率: 0.40%
  • 理想グリッド数: 25.62本(→25本前後で設定)

下落トレンドでの設定例

下落相場でのグリッド設定例

相場状況:高値からの明確な下落トレンド。移動平均線(MA)が下向きに変わっている。

現物グリッド向きではないので、ボット作成しないのが正解。

現物グリッドのよくある質問

現物グリッドはAI設定だけで十分ですか?

いいえ。

AI設定は便利な出発点ですが、結果の保証はされていません。相場状況に合わせて見直すことが大切です。

グリッド数は多いほど有利ですか?

いいえ。

多いほど細かく売買しやすくなりますが、1回あたりの利益幅が小さくなってしまいます。

下限価格と上限価格はどう決めればいいですか?

直近の値動きレンジを基準に決めるのが基本です。

レンジ相場なら直近レンジに近づけ、トレンド相場ならやや広めに取りましょう。

下落相場では現物グリッドは使わないほうがいいですか?

必ずしもそうではありませんが、基本は避けたほうが安全です。

まとめ

現物グリッドは、「相場に合わせて設定する」ことが重要です。

固定設定では、約定しない・利益が出ない原因になるため、まずは相場の状態(レンジ・上昇・下落)を見極め、その後、ATRを基準に設定します。

現物グリッドでは、レンジなら「回転重視」、トレンドなら「追従重視」といったように、相場に合わせて設定しましょう。

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この記事を書いた人

2021年ビットコイン暴落後から参戦しはじめたNFT後発派です。バイナンス・GMOコイン・レンディングサービス(BitLendingやNEXO)を利用しています。失敗しながら学んだことを紹介しています。※プロフィール詳細はこちら

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